引き立て役よさようなら(番外編追加)
「川久保君人気って本当に凄いね。他校からもあんなに来てるよ」
仲の良い友達の陽子は少し興奮気味だった。
2階の教室の窓から下を見ると近くの女子高の制服を着た女の子たちが
キャッキャいいながら体育館の方へ向っているのが見えた。
「・・・そうみたいだね」
「おかげでやっと休憩できるね」
「本当は陽子、見に行きたいんじゃなの?」
陽子は少し赤くなった頬を両手で押さえた。
「わかる?」
「行ってきていいよ。どうせ暇だし・・・」
「でも・・・」
うれしいけど優花に悪い気がしてもじもじしていた。
「好きなんでしょ?川久保君の事。彼の歌う姿ずっと見たいって
いってたじゃん。行っおいで」
陽子は優花の手を握るとぶんぶん揺すって
「ありがと~~1曲終わったら帰ってくるから」
そう言って物凄い勢いで教室を出て言った。
教室にはお客はいなくて優花一人だった。
窓から景色を見ながら優花はさっきの陽子のうれしそうな顔を
思いだし。フッと笑った。

優花には、好きな人はいなかった。
自分に自信がないから人を好きになっても
笑われるだけだと思っていた。
好きな人を見て頬を染めたり、ちょっとしたことで
うれしかったり悲しかったり、ドキドキしたりする陽子が羨ましかった。
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