私がお嬢様をやめる時
《水嶋》
俺は水嶋 雄輔。

博物館のトイレから
菜々穂の元へ戻る途中
清美ちゃんに捕まった。


「どうしてですか?
いつも菜々穂の前では無表情なのは。」

眉間にシワを寄せて怒る清美ちゃん。



俺は菜々穂と出会った時を
思い出した…


「水嶋。依頼だ。」

俺は上司に呼び出され
契約書を渡された。


「明日からこの家の執事として
働いてくれ。」


書類を見て驚いた。
俺の提示してある契約金の倍の額。
そして…
仕事依頼は社長令嬢の専属執事…


「社長令嬢…?
申し訳ありません。
俺はそういった人に仕えるために
ここにいるわけじゃありません。」


上司ははぁっとため息をついた。
俺は完璧な執事になりたくて
今まで頑張ってきた。
資格だって
数えきれないほど持っている。

20歳の社長令嬢?
そんな人間に仕えるために
頑張ってきたわけじゃない。


「わかってる。わかっている。
君がどれほど努力をしているか。

だがな、上の命令なんだ。
わかるだろ?この契約金…

どれだけのお嬢さんだかわからんが
この額で断るバカがいるか?

相手は最高の執事を依頼してるんだ。
君に断る権限はないんだよ。」

俺をなだめるように
頼む。と頭を下げる上司。
俺は仕方なく仕事を受けた。
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