おにぎり屋本舗 うらら
家に帰ると、当然無人。
仕事中の洗濯乾燥機だけが圭を迎えてくれた。
火の気のない寒い部屋の中を探し、食卓テーブルに書類ケースを見つけた。
それを鞄に入れ、すぐに自宅を出る。
母親の勤務先の市役所は、電車3駅と、徒歩15分ほどで着く。
札幌駅で電車を下りると、圭は母親の為に街を走った。
雪がチラチラ舞い降りる。
葉を落とした街路樹も、車の屋根も、白く染まっていた。
アスファルトの地面だけは、道行く多くの人々に踏まれ、雪はすぐに消えてしまった。
走る圭の口から白い息がこぼれる。
暑くなり、コートの前ボタンを全て外した。
母親は電話で、今夜はハンバーグにしてあげると言っていた。
こんなに急いでやっているのだから、
ハンバーグは特大で、高級デミグラスソース掛けにして貰おう。
圭はそんなことを考えながら、走っていた。