おにぎり屋本舗 うらら
 


「はぁ…シバですか…」


知本は小泉の言葉を復唱したが、何も分かっていなかった。


無理もない。
“あの事件”は知本がまだ子供の頃に起きた事件だから。



10年前に起きた、爆弾テロ事件を小泉は思い出していた。

北海道内の20の公的機関に爆弾が仕掛けられ、20箇所が同時に爆発炎上したのだ。



その犯行グループは、「破壊の光」というカルト宗教団体だった。


彼らは破壊神シバを奉り、全てを破壊した後に、北海道に彼らだけの楽園を作ろうと企んでいた。



小泉の脳裏に炎が蘇る。

爆弾テロ事件の時、小泉はまだ高校生であったが、強烈にその事件を覚えている。


両親を殺したその事件を……




「小泉警部…?」


名を呼ばれ、小泉はハッと我に返った。


意識が10年前に戻っていて、呼吸が速くなり額に汗が滲んでいた。



「大丈夫ですか?」


「ああ…すまない…
嫌な事件を思い出してしまっただけだ」



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