おにぎり屋本舗 うらら
ジャンパーの男がうららを追い越し、ズンズン進んで行くと、
ビルとビルの間の狭い路地から、急に背の高い男が出て来た。
その男は、ジャンパーの男の後ろを一定の距離を保ち歩いていた。
うららは「あれ?」と思った。
背の高い男の背中に見覚えがあった。
―― 怖いお巡りさんに似ているけど…違うかな…
背格好や髪型は似ているが、服装はいつもと違っていた。
小泉がいつも着ている黒スーツではなく、
男はデニムにストライプの水色ワイシャツを着ているのだ。
うららは小走りに走り出す。
背の高い男が、小泉なのか確かめようとしていた。
10メートル先を歩く男にうららが追い付く。
横から顔を見ると、やはり小泉だった。
偶然知り合いに会えた気分で嬉しくなり、うららは笑顔で呼びかける。
「怖いおまわ…」
そこまでしか言えなかった。
うららに気付いた小泉が突然うららの腕を掴み、ビルの壁際に引き寄せ抱きしめたから。