レッスンはアフターで
「今はプライベート。苗字で呼んでもらったこと光栄に思いなさいよね。そこまで言うのなら、私の名前くらい覚えているでしょうね?順一さんの女の友達としてじゃなくて名前をちゃんと覚えたでしょうね?」


くっ、コイツ。絶対に俺が名前を覚えることないと思っている。馬鹿だ。


「順一の女は、山口だったよな!愛奈」


ハハハ、面白い顔!


目を丸くしたかと思えば、みるみるうちに真っ赤になって。


俺を男として、意識しているって顔。


「馬鹿だろ。さっきまで一緒に体験してたんだ。嫌でも、お前の名前くらい覚えている。あ、そーだ。俺、あんたの名前、知らないから。俺のこと、勝手に名前で呼ぶの止めてね」


私は?と目を輝かせて見ている店主の名前なんて知らないと伝えてやる。あからさまに、がっかりされても仕事に必要ない女の名前は覚えるわけがない。


それに反して、河瀬愛奈。仕事と関係なく、俺が名前を覚えていたなど、絶対に教えてやらない。


ただ、今日のこの女。踏み込み過ぎずの程よい距離は、居心地がいい。




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