幸せの花が咲く町で




「わぁ、おいしい!
篠宮さん、本当にお料理上手だね!」

奥様は、ついさっきまで眠そうな顔をされてたのに、ごはんとなるとしゃきっと目が開いて、ぱくぱくと召し上がれた。
旦那様はやっぱりまだ具合が良くないようだった。



次の日の朝、言われた時間に堤さんのお宅に行って、小太郎ちゃんに朝ごはんを食べさせ、バス停に見送りに行った。
私が連れて行ったものだから、バス停にいたママさん達に、パパはどうしたのかと訊ねられていた。



お見送りを済ませてから、今度は奥様の朝ごはんに取り掛かった。
奥様は、呑気にソファーで眠ってらっしゃる。
昨日見た冷蔵庫の中に魚はなかった気がしたので、昨夜、帰りに干物を買っておいて、それを焼いて出したら、奥様はとても喜んで下さった。



「本当にごめんね。
小太郎のお迎えが済んだら、あとはもう良いからね。」

「はい。」

「あ、それと、ついでに部屋に飾る花をお願いします。」

「はい、わかりました。」



奥様が出て行かれるのと一緒に私も花屋に向かった。
都合の良いことに、私が出勤する時間とほぼ同じ頃に店に着いた。



「おはようございます。
昨日は申し訳ありませんでした。」

「おはよう。」


昨夜は、荷物を置いたままだったから、一旦、店に戻り、事情を話した。
オーナーの奥様も、堤さんのことを心配されていて、何時間も留守にしたのに叱られることは少しもなかった。



「それで……今日もまだ旦那様の具合が悪いので、小太郎ちゃんをお迎えに行きたいんですが……」

「小太郎ちゃん…?あぁ、あのボクのことね。
構わないわよ。」

「あ、ありがとうございます!」



オーナーも奥様も優しい人だから、本当にありがたい。
これが、普通の会社だったら、こんなに気持ちよく行かせてはもらえないだろうし、まず、こういうことは言いにくい。
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