幸せの花が咲く町で




「こんにちは、篠宮さん。」

「こ、こんにちは。」

次の日、それは今までなら週のうちで二番目に幸せな火曜日だったのに、今日は違った。
大げさだけど、まるで、死刑の宣告を受ける罪人みたいな気分だった。



「明日の花ですが……」

「つ、堤さん、そのことなんですが……
実は用が出来てしまって、明日は行けそうにないんです。」

「そうでしたか……残念ですが仕方ないですね。
……何かあったんですか?」

「は、はい、あの……その……は、母の体調がちょっと良くなくて……
それで、病院に連れて行かなくてはならないんです。
ちょっと遠くの病院なんで……」



それは、昨夜考えたつまらない嘘だった。
来週は、母の具合が思ったより悪くて、しばらく通院しなくてはならなくなったと言って……
そしたら、一か月や二か月は行けなくても不審には思われないはずだから。



現に堤さんは私の吐いた嘘をあっさり受け入れて下さってる様子……
少なくとも疑われてはいない気がする。



これで良い……
こうやって、少しずつ距離を広げて行って……



考えただけで、辛くて涙がこぼれそうだった。
堤さんは毎日小太郎ちゃんをお迎えに来られるし、その度に声をかけて下さるから、全く会えなくなるわけじゃないのに……



「では、明日はひとりで活けてみます。
良かったら、花を選んでいただけませんか?」

「は、はい。」

私はまだどこかぼんやりとした気持ちのまま、堤さんにお渡しする花を選んだ。
いつもなら二人で花についてあれこれお話しながら、楽しく活けるのに……明日からはそれが出来なくなる……



「堤さん、お花がお好きなんですね。」

いつの間にかそこには翔君を連れた翔君ママがいて、私は驚き、思わず声をあげそうになるのを堪えた。



「ママ、小太郎君の家にはお花が一杯飾ってあるんだよ。」

「まぁ、素敵。
お花はいつも堤さんが活けられるんですか?」

「活けるだなんて……ただ花瓶に入れるだけですよ。」

「おじさん、もしかしておねぇなの?
料理もうまいし、お花も好きだなんて、なんかおかしいな!」

「こ、これっ!翔!失礼でしょ!
堤さん……申し訳ありません。」

「いえ……」

堤さんは、瞳を伏せ、悲しそうな顔をされていた。
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