幸せの花が咲く町で




「優一…香織さんのお母さん、まだ通院してるの?」

「そうみたいだね。」

「やっぱり、年取ってからの病気は長引くのかな?」

「……どうだろうね。」

「……どうかしたの?」

僕の言い方が投げやりだったせいか、なっちゃんは不思議そうな顔で僕をみつめた。



「どうもしないよ。
ただ……なんとなく、最近、篠宮さんの様子がおかしいような気がするんだ。
お母さんの通院なんて嘘で……本当の理由は別のものなんじゃないかな……なんて思ってね。」

「別のって……あぁ、もしかして、家の人にバレて何か言われたとか?」

「確か、うちに来てることをお母さんには話してるとか言ってたと思うんだけど、それも本当かどうかなんてわからないもんね。」

「どうしたの?
あんた、篠宮さんと喧嘩でもした?」

「そんなことないよ。
最近は、小太郎を迎えに行った時に、ほんの一言二言、挨拶を交わすだけだもん。
喧嘩のしようがないじゃないか。」

なんだかとても苛々していた。
なっちゃんが悪いわけでもなんでもないのに、僕は篠宮さんに対する苛々をなっちゃんにぶつけていた。



「ねぇ……突然だけど、あんた、篠宮さんのこと、どう思う?」

「ど、どうって何が?」

なっちゃんの質問に動揺した僕は、それを悟られまいと懸命に平静を装った。



「いや……篠宮さんが独身だったら良かったのになぁ…って。
なんとなく、あの人だったらあんたを守ってくれそうだし……」

「僕は誰かに守ってもらわなきゃ生きていけないダメな人間だからね。」

「そういう意味じゃないって!
篠宮さん、あんたと気も合うみたいだし、まぁ多少年上なあたりもあんたには合うと思うし……」

「いいかげんにしてよ!」

僕の苛々はピークに達し、無意識に立ち上がって大きな声を上げていた。



「あの人には家庭があるんだ。
つまらないことを言うのはやめてくれ!」

そんな捨て台詞を残して、僕はその場を後にした。



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