幸せの花が咲く町で
「本当にこんな所で良いの?」

「うん、こういう所の方が落ち着くから。」



私達は、割と庶民的なレストランに入った。
ファミレスに近い雰囲気のお店だ。
最初、智君が入ろうとしたお店は、パスタが何千円もするイタリアンのお店だった。
恥ずかしいことだけど、普段、粗末なものしか食べてないから、表の看板の値段を見ただけで、私は足がすくんでしまい、そのすぐ傍にあったレストランに誘った。



「かおり…ありがとう。」

「え…?ありがとうって、何が?」

「うん……」

智君は照れくさそうな顔をして、お冷を一気に飲み干した。



「突然、手を繋いだのに、そのままにしてくれてたこと……」

智君は俯いたまま、そう呟いた。



「え…あ、あぁ、あれね……」

私は無理して平静を装った。
声が震えてしまったから、無理したのはバレてるかもしれないけど……



「実はね…かおりは大山まどか似だって言ってたから、あんまりモテない人なのかな?って思ってた。
でも、実際、会ってみたらこんなに美人だし……
もしかしたら、僕なんて相手にされないんじゃないかって思ったら不安になって、気がついたら勝手に手を繋いでた。
今までの会いたかった気持ちが、押さえきれなくなったっていうのもあるのかもしれない。
とにかく、かおりと手を繋いでる間、僕はものすごく幸せで…でも、かおりが内心怒ってるんじゃないかって、そのこともものすごく心配で……」

「智君……」

見た目とは違って、やっぱり智君は真面目で誠実な人なんだって思った。
最初は確かにびっくりしたし、女慣れした人なのかって思ったけど、智君がそんなことを考えてたなんて、本当に意外だったし……とても、嬉しかった。


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