幸せの花が咲く町で




「おいしい~!」


口の周りをチョコまみれにしながら、小太郎がにっこり笑った。
それを見て、女性も嬉しそうに微笑んだ。



「本当にありがとうございました。
こんなことまでしていただいてすみません。」

「いえ…久しぶりだったから、一枚目はちょっと焦げてしまいましたけど、楽しかったです。
あ、そんなことより堤さん……内科ですけど、かかりつけのところはありますか?」

「いえ、ありません。」

ここに越して来てから、病院は一度も行ったことがなかった。
元々は、身体は丈夫な方だったし、病院が嫌いだから、もうかなり長い間、病院には行ってない。



「でしたら、ここからすぐの所に小山田クリニックって所があるんですが、そこに行かれたらいかがでしょう?
具合が悪いと、近い方が良いでしょう?」

「そうですね。そうします。
場所を教えていただけますか?」

「診療時間は4時半からのはずですから、その頃になったら、ご案内します。
本当にここからすぐなんですよ。」

「……ありがとうございます。」

柱の時計を見ると、2時半過ぎだった。
あと少しだし、道がわからずうろうろするよりは、教えてもらった方がありがたい。
この際、女性の好意に甘えてしまうことにした。



「ご馳走さまでした。」

女性と話してる間に、小太郎がパンケーキを食べ終わり、満足そうな顔をしていた。



「パパ、お買い物はどうするの?」

「今日は、パパ、具合が悪いから、お買い物はやめておこう。」

「じゃあ、僕がお買い物してきてあげる!」

「いいよ。今夜はなにかあるものを食べとこう。
冷凍食品もあるし、なんだったら、ピザでも取って……」

「ママが今日はしょうが焼き食べたいって言ってたよ!」

小太郎は、聞いてないようで意外となっちゃんと僕の話を聞いている。



「うん、しょうが焼きは、パパが元気になったら作るから……」

「あの…お買い物なら私が小太郎ちゃんと一緒に行って来ますけど……」

「いえ……そんなことは……」

僕は当然遠慮したが、結局、小太郎と女性はスーパーに買い物に行ってしまった。
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