エンビィ 【完】
その不自然な行動に、
ユキノの視線の先を辿れば―――…
綺麗に微笑んでいるであろう、伊織の姿。
伊織もまた……二階にいたのだ。
探しても、見つからないはずだ。
「…………はっ、…」
「玲奈様…?」
「……ど…な………なのよ、」
「玲奈様?」
「伊織は…っ…どんな男なのよっ…!」
あたしにこれを聴かせて、そして見せたかったのか。
なんて滑稽。
なにしろ、あたしは伊織に助けられたと、
優しくしてもらえたと、
その瞳に一瞬でも映ったと――――勘違いしてしまったのだから。