エンビィ 【完】




あたしの人生の転換期は、小学5年の時。

貧乏というわけでもなかったけど、質素だった生活が一変した。



どうやって手玉に取ったのか、

未だ教えてくれない母が再婚したのは、金持ちの男。



アパートから豪邸暮らしになったあたしは、それまでの質素な生活をすぐに忘れた。


男は贅沢がいかに素晴らしいか、あたしに教え込み、あたしはあたしで子供ながらに贅沢覚え、味を占めた。



男は優しい。


母だけでなく、血の繋がらないあたしを疎むどころか、本当の子供のように可愛がった。

好きなものを買い与え、欲しいだけお小遣いをくれる。



お金って、
この世で一番素晴らしいって感じた。



これさえあれば、なんでも手に入る。


あたしはあたしの世界の征服者になっていて、まさかそこを蹴落とすモノがあるなんて……お金で手に入らないものがあるなんて、知恵の浅かったあたしは気づかず有頂天でいた。




だからその屈辱は、あたしの汚点。





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