エンビィ 【完】
それから百瀬は、伊織の家柄について話してくれた。
知るところでは知る話らしいが、
経営に興味のないお嬢様という人種は、ほぼ知らない有名な話。
伊織の家は、家系情報について、不気味なほど沈黙を守っているらしい。その不透明さは異常で、犯罪すれすれのような違法な手段も使っても、まるで分からないらしい。
つまるところ、意図的に隠してる。
なるほど…ね、
だから親戚かもしれない、か。
もしそうだとして――、
だったら、腑に落ちない点がある。
不気味なほど沈黙を守り、家系情報に霧をかける家が、表に出してきた女。
その女にどんな役目がある?
まあ、それは経営を生業とする人種が考えるとこだわ。
――――あの子は、シンデレラじゃないわ。
――――白雪姫よ、白雪姫。
――――これからいくらでもシンデレラになれるんだもの。