一瞬の、夏。
”友だち”
高見澤先生の弟さんに出会ってから一週間後、わたしは高見澤総合病院に定期健診に訪れた。
いつも通りのことをして、終わる。
今日はわりと早く終わったしシュークリームでも買って帰ろうかなぁ...なんて考えてたら、自分の名前が呼ばれていることに気がついた。
いつも通り、お金を払って...

「墨咲さん、高見澤先生がお呼びです。」

!?
なにか、異常が見つかったとか...?
でも、こんなに早く結果が出るわけないし...。

「...失礼します。」

とりあえず、診察室の勧められた椅子に座る。

「あ、彩ちゃん、ごめんね!」

「へ?」

「結果とか、病気のこととか、そういうんじゃないからね!」

...な、なんだ。

「ごめんごめん!」

心当たりがない。

「あの、何か、ご用ですか?」

「話っていうのは、ケシのことなんだよ。」

高見澤先生から聞いた話をまとめると、
私がこの間中庭で出会ったのは、高見澤芥子【タカミサワ ケシ】高見澤先生の弟で、高見澤家の次男。訳あってこの病院に入院しているらしい。

「へぇ...」

「あとね、お願いがあるんだけど...」

今までハキハキと喋っていた高見澤先生が急に口ごもった。

「...言いにくいことですか?」

「あ、!いや、ちがうんだよ!ただ、ちょっと厚かましいかなと...」

先生は困ったように笑う。

「...どうぞ、言ってみてください。」

「じゃあ、さ、...いい?」

どんなことを言われるのか、気になって無意識に体が前に乗り出す。

「あのさ、芥子の、友だちになって。」

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