一瞬の、夏。
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「...ただいまぁ」

今日は誰からも返事が返ってこなかった。
そういえば、今日は地区の会議があって、お母さんいないんだったなぁ、なんて考えながら歩く。ほとんど無意識に、ベッドの上でうずくまった。

目を閉じるとすぐにフラッシュバックする、あの日。白かった服も、廊下も、記憶も全部、鮮血に染まったあの日。友だちの悲鳴と、手についた血の生温い、ベチョベチョした感じが気持ち悪くて、わたしは走りだした。

意識が持っていかれそうになる直前で目を開く。大丈夫。わたしは、まだ、大丈夫、だから。

「これは、君のリハビリでもあるんだ。」

高見澤先生が言ったことを思い出す。そう、リハビリ。わたしは、友だちを作っちゃいけないんだから。

押し切られるようにしてしまった約束に、今更罪悪感と期待が沸き上がる。わたしはどっちの気持ちにも蓋をして、眠った。



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