あじさい~揺れる想い~


「そんな甘えた声を出す女の子が好きなん?」

渡辺くんの顔を覗き込むと、私はわざと寂しそうな顔をしてみた。



「いや・・・・・・その・・・・・・俺は、手塚さんが困る顔が見たくて・・・・・・ほんまに・・・・・そんな甘えた声を出す子は逆に嫌いで・・・・・・。

手塚さんみたいに、何でも一生懸命する子が好きなんや・・・・・・」



うわぁ、顔、真っ赤やん!

おもしろい!

隣で笑いを堪えていることも知らずに、渡辺くんは、私に返事を求めてきた。



「なぁ・・・・・・手塚さんは?」

そう聞いてくる彼の顔があまりにも真っ赤で、つい吹き出してしまった。



「ぷっ!あはは・・・・・・」


私の笑い声で、自分がからかわれていることに気付いたのか、彼は膨れていた。



「人が真面目に話してるのに笑うな!」


必死に怒ってるけど、それもまた私のツボに入り、笑いが止まらなかった。



「・・・・・・ははは、私もね・・・・・・渡辺くんの困った顔が好きやで」



なんてふざけた告白なんだろうと思いながらも、とりあえず想いを伝えてみたが、隣の彼が茹でダコ以上に真っ赤な顔をしていたので、やはり笑いを堪えることが出来なかった。



「ありがとう」



私の顔を見つめて言う渡辺くんの顔があまりにも真剣で、私も笑いが消えて行き、見つめ合うと、どちらともなく近づき、唇を重ねた。








< 60 / 63 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop