ガラスの靴じゃないけれど


つい数時間前に、彼と私は一糸まとわない姿で結ばれたばかり。

甘くとろける昨夜のひと時を思い出した私は恥ずかしさのあまり、つい、俯いてしまった。

そんな私をからかうのは、もちろん彼。

「何、照れてんだよ。さては」

「あー!何でもありません!それよりさっきから、いい香りがするんですけど」

大きな声で言葉を遮った私は見て、彼はクスクスと笑い出す。

「腹減っただろ?丁度、目玉焼きもできたし、一緒に食おう」

レタスとミニトマトが並んだお皿に、焼き上がった目玉焼きを乗せるとテーブルに移動する。

すでにテーブルには、クロワッサンとコーヒーカップが置かれていた。

「響さんひとりに準備させてごめんなさい」

「目玉焼きくらいで大袈裟だな。ほら。冷める前に早く食うぞ」

彼は手際よくコーヒーを注ぐと、私の前にカップを差し出す。

「砂糖とミルクは入れるよな?」

「はい」

「だよな。若葉がブラックコーヒーを飲むわけないよな」

「それって、どういう意味ですか?」

「ん?まあ、そんなに深く考えるな」

お砂糖とミルクを用意してくれた彼と共にテーブルに座ると「いただきます」と声を揃える。

彼が作ってくれた朝食は、シンプルだけれど格別に美味しかった。


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