・約束

「雅也…覚えてたの?」


「…結局10年経っても一人前になれなくて…春夏を迎えには行けなかった」


「私は…忘れられてるもんだと思ってた…」


「忘れなかったよ。
 でも、約束の10年が過ぎてしまったから…ずっと諦めてた」



「…こんなカタチで再会するとは…ね」

「オレは偶然でも、会えて嬉しかったよ」


「…私…も」

私を真っ直ぐ見つめる雅也は、あの頃のままの雅也だ。






「春夏…昼間、坪井さんに言ってた付き合ってる人…ってさ
 もしかして社内のヒト?」



「……うん…ごめん」

「なんで謝るんだよ? ずっと連絡もしなかったんだ。
 普通の女性なら、そんな男とっくに忘れて当然だよ」


「…」


「幸せなんだろ?」


「…う…ん」


< 43 / 85 >

この作品をシェア

pagetop