【完】『道頓堀ディテクティブ』
「じゃあ…画像で」

これはヒットが七百件ばかりあった。

「これ、ほとんどアダルトなやつですやん」

確かに並んでいるのは「無修整動画」だの「出会い系」だのばかりである。

「まぁこんだけべっぴんさんやと、似たような女の子も掃いて捨(ほ)かすほどおるやろし、これもしゃあないのかなと」

確かに借りた写真は、髪の長いスレンダーな美女である。

「似たような美人って世の中けっこういてますね」

「そんなん茶化してる場合ちゃうやろ」

手がかりを探さなければならない。

「まぁ大阪にいない可能性もありますから、ひとまず関東へ戻られることを勧めます」

くどいがまりあは横浜から来ている。

「でもホテルだと宿泊費、高いですよね?」

さすがに宿無しでは横浜へ帰せない。

「どないします?」

「まからん屋のオバハンに頼むしかないやろ」

まからん屋のオバハン、とはこのビルのオーナーで、市場の洋品屋に服を卸す、直美おばちゃんと呼ばれていた鳥居直美という女社長のことをさす。

「なるほど…あのオバハンなら」

情に厚いから間違いはない。

説き伏せるのだけは面倒やが、とこぼしながらも、穆が電話口で約束を取り付けると、

「ちょっと話してきまっさ」

カンカン帽を手に階段を降りて行くのであった。

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