【完】『道頓堀ディテクティブ』
坂の真ん中ほどの、芭蕉の供養塔があるという禅寺に、大二郎の周藤家の墓はある。

花を手向けた東郷とまなみが手を合わせると、

「久保谷くんは、今後どうするんや?」

振り向いて訊いた。

「探偵の仕事は続けますよ」

次からアシスタントはまりあちゃんになりますけど、と答えた。

「なかなか大変かも知らんけど、弱気になったら敗けやで」

東郷は何かを見透かしているかのようであった。

これには穆も、

「…はぃ」

と応じざるを得ない。

そうやって。

墓参した東郷とまなみを見送って、坂を東郷たちとは逆向きに下り切ると、穆とまりあは坂の下の松屋町筋に出た。

「…何で来たかったんでしょうね」

「それは分からん」

「これって、ミッションは完了なんですか?」

「犠牲は払ったけど」

まぁ完了やろな、と冷静ないつもの穆に戻っていた。

「…さ、戻りましょう」

信号が青になると、日本橋の方角を目指して穆とまりあは歩き始めた。

雲の裂け目の陽射しは、わずかに傾いていた──。
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