Jewel Memory*2つ年下



「教室戻る?」


ココは立ち上がりながら言う。


「うん。

ココって、掃除場所どこだっけ?」



一瞬ココに視線を向け、また前に戻す。





あ。





ぼーっとする視界に入った巳波の姿。



きっと今、あたし無表情だ。



視線に気付いて、っていうより。


たぶん、前からあたしとココがいたことに気付いてたと思う。



巳波と視線が絡まった。





久しぶりに合った瞳は、優しく微笑む。


自然とあたしも、歯を見せて笑ってた。



本物の巳波だ。


あたしの知ってる巳波が、笑ってくれてる。




手を振ってくれてる。


手の振り方で分かるよ。



顔の横で手を挙げて、本当に小さく振る。


それが巳波の振り方。





わずかな時間だったけど、確かに巳波の視線は

あたしに向けられてた。



隣にいたココにじゃない。


あたし“だけ”に

向けられてたんだ。





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