せいあ、大海を知る
遊園地デートは、思っていた以上に楽しくて少しはしゃぎすぎてしまった。


基本的にはずっと4人で行動した。ジェットコースターにも乗ったし、恥ずかしいねと笑いながらメリーゴーランドにも。コーヒーカップでは和樹君がすごい勢いで廻しちゃって、なぜかその和樹君だけが酔っちゃうっていう面白いハプニングもあった。


おばけ屋敷は私が断固拒否したのに、桂馬に大丈夫だからって無理やり連れて行かれて、全然大丈夫じゃなくって怖くて叫びまくって、必死に桂馬にしがみついていた。


こんなに笑ったり大きな声を出したりしたのは久しぶりかもしれない。


桂馬と和樹君の提案に乗っかってよかったなって、心から思えた。少しだけ残念に思っていた一昨日からの私を叱ってやりたいくらいだ。






「……最後はやっぱり、あれじゃない?」


今日1日を充分に満喫して、周囲が薄暗くなり始めた頃に、沙耶ちゃんは高いところを指差しながら言った。彼女の指差す方向を目で追うと、なるほどと納得のいく大きなものがあった。


遊園地といえば!な定番中の定番である、観覧車。


「どうする、最後に乗る?」


乗りたそうな沙耶ちゃんに和樹君はすでに乗る気満々なんだろうな。観覧車か……私も桂馬と乗りたいけど、桂馬はどうなんだろう。


はっきりと言えずに、少しだけ視線をあげて桂馬の表情を覗った。そんな私の反応を予想していたのか、すぐにばっちりと目が合ってしまい、驚いた私を他所に彼は少しだけ口角を上げて微笑んだ。


「いいよ、俺たちも乗る。もちろん2人ずつでいいんだろ?俺は千夏と2人で乗りたいし」


そして、ぽんぽんと軽く弾ませながら、私の頭の上に掌を乗せた。和樹君たちの前だからまずいとは思ったけれど、はっきりと発せられた言葉に顔が火照っていくのが分かった。


見られるのが、そして気づかれるのが恥ずかしくて、俯くしか出来ないでいた。


「……見せつけんなよ。俺らだってせっかくだから2人がいい。な?沙耶」


「千夏ちゃん可愛い!!みんな意見が一致ということで、2人ずつ乗ろうか。そして、そのまま解散しようか。すぐに帰ってもいいし、もう少しゆっくりしてもいいし」


私が何も言えないでいる間に、話しがポンポンと進んでいく。


「あー、それで決まりな。千夏……行こうか」


優しく声を掛けてくれた桂馬に、やっと顔をあげるとこれまた優しい目をした彼としっかりと目が合った。私は未だに何も言えずに、ただ首をコクンと縦に振った。

< 10 / 73 >

この作品をシェア

pagetop