せいあ、大海を知る
待ちきれず身を乗り出して画面を覗き込もうとしている桂馬に、私の携帯を急いで差し出した。私だけでは意味が分からなくて、彼に確認してほしいと思っていたから。


無言で受け取った桂馬の目は真剣そのもので、目を通していく様子をじっと眺めながら待つことにした。


「……何か分かりそう?」


2台の携帯の間を行ったり来たりしていた視線が一瞬止まり、少しだけ目が見開かれたのに気が付いて、そう尋ねた。きっと何かに気づいたか、考えが思い浮かんだんだろうな。これだけ見つめていれば少しの反応も見逃さない。


「これってさ、サイトのアドレスじゃないか?……千夏、何か書くもの。紙とペン貸して」


「紙とペン?分かったちょっと待ってて」


一体何に使うんだろう。疑問に思ったけど、とりあえずソファから腰を上げた。持ってくれば答えは分かるはずだから、急いで電話の傍に置いているメモ帳とペンを取りに移動した。


2つを握りしめて、元の所に戻り、はいと桂馬に渡した。


「ありがとう。ほら、見てろよ。2通のメールのアルファベットと交互に並べていくと」


ぶつぶつと説明しながら、桂馬はメモ帳にどんどん文字を書いていく。私は黙ったまま、彼が握っているペンがスラスラと紙の上を滑っていくのを見つめていた。


「……あっ」


さすがに私にも見えてきた。これは明らかに、サイトのアドレスだ。そして、私にも桂馬にも馴染みのあるサイトだということにまで気が付いた。


「千夏にも分かっただろ。勝家さんが何を言いたかったのか確認するために、ここにアクセスしてみるしかないな」


「……そうだね。それしかないよね」


私の返事を聞きながら、桂馬は自分の携帯で紙に書かれているアドレスを、そのまま打ち込んでいく。


ここでも私たちの間に会話はなくなって、ボタンを操作する音と、カチカチと時を刻む音が大きく鳴り響いている。
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