お金より体力が大事?
そして、小花のにわか作りのジムの広告塔を幸鷹がすることを薦められる。


「名前は俺が考えていいかな。
S&Yスポーツ。短いけど・・・こじんまりで堅実に。だ。

何から何までありがとう。小花。」


「いいんだって。じつをいうとね・・・私は・・・えっと。」


「小花さんは現役のときの樋川さんの大ファンだったんです。」


「ちょ、部長!!!」


「えっ?」


「ここからは秘書の仲元佑子(なかもと ゆうこ)が説明いたします。
小花さんの本当の寝室には、現役時の樋川さんの写真がたくさん貼ってあります。

けっこうミーハーだったようで体操雑誌はもちろん購入、そしてスクラップもご自分でかなりしておられました。」


「もう、佑子ちゃんやめて!
やめてよぉ、私・・・ごめんなさい。あと説明をお願い・・・。」


はずかしくなった小花は走って逃げ始めた。

だが小花が別の運転手の車までたどり着く前に幸鷹に腕をつかまれた。



「待てって。お礼をいうのは俺の方なんだから、君は逃げなくていいんだ。」


「でも・・・でも・・・なんか卑怯なことしちゃって。
ほんとは幸鷹さんのこと知ってたのに、偶然装っちゃって。

もちろん、酒場で助けてもらったのは偶然だったのよ。
だけど・・・助けてもらったとき、すぐに幸鷹さんだってわかってうれしくて。」


「そっか。俺は大人なのに、運動バカだから君や君のスタッフみたいに賢くなくて、ほんとにバカだなって思っただろ?

これが俺なんだ。
なのに、君は俺のせいで損ばかりするのに、うれしそうに話してくれて、俺の方こそどれだけ小花に感謝していいやらわからないんだ。

俺は勉強しながら、もう一度新しいジムでがんばるよ。

今度は君がスポンサーであって共同経営者なんだから必死でがんばるから。」



「うん。やっぱり、幸鷹さんにはそっちの方が似合ってるわ。
今だって走ってる姿はカッコいいもん。

元の従業員の人たちも引っ張れるだけ引っ張って助けてあげて。
私もできる限りのバックアップをするから。

宣伝用のポスターのコピーもいろいろ考えたのよ。」


「そりゃ、すごいや。
さすが晴波優樹菜だな。」



それからの2人はなかなか会う時間もとれなかったが、新しいS&Y社にはもとのハミングスポーツのスタッフがかなり入ってオープン準備に追われていた。

幸鷹も宣伝用ポスターや、地元のFM局などに精力的に出て、オープンの宣伝に乗り出していた。

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