お金より体力が大事?
すると祐司はにっこり笑って、小花の手をとった。


「僕は君が気に入りました。
不慮の事故は誰にでもあります。

だからといって大切な人や物の思い出を消すわけにはいきません。
でも、前に進むなら思い出は思い出として分類する必要があるんじゃないかな。」


「分類?」


「うん、表現はまずいかもしれないけど、会えない人の思い出は思い出。
会える人の思い出は、連絡先と思い出っていうようにね。

会って話せる人は君から遠ざかったわけじゃないんだから。
無理に遠ざける必要なんてないんじゃないかな。」


「祐司さん・・・。」


「僕は見た目が怖いから嫌かな・・・。」


「そんなことはないです。
今の祐司さんはとても優しい顔をされています。」


真崎祐司はそのあともずっと小花といっしょに時間を過ごし、その日のうちに小花に告白し、ナイスカップルに選ばれたのだった。


翌日も、若い小花に交際を申し込む男性はけっこういたが、もともと婚活に興味のなかった小花は、祐司に了解をもらって相手は祐司のままで過ごしたのだった。



「いいのかい、こんなおじさんの相手なんかしていて。」


「祐司さんはおじさんじゃないですって。
私などからしたら、大人だけど、おじさんじゃないですよ。」


「じゃ、あらためて申し込もうか。
僕は、真面目に君と付き合いたい。

できれば、結婚を前提としてだけど、いいかな。」


「それは・・・。」


「そこまでは決心がつかないかな。
いいよ。僕は急がないから。」



帰宅してからも、祐司はちょくちょく小花に連絡を入れてはデートに誘うという強引さだった。

そして、その話はS&Y社でも話題に出るようになった。



「もしかしたら、近いうちにオーナーの婚約で盛り上がるかもしれないわね。」

「お相手はベストセラーに登場している大人の男性だって噂もあるわ。」


「週刊誌で見た写真によると、けっこうイケメンで年齢より若くみられるみたいね。」


「へえ、どれどれ、私にも見せて。」




幸鷹は小花の噂話にはぜんぜん興味もなく、仕事に打ち込んでいたが、ある日ある客からの話をきいて愕然とした。


「この男は確か、既婚者だったはずなんだけどなぁ。
離婚したんだろか。」


「おい、どういうことなんだ?
この真崎祐司って知っている男なのか?」


「うん。俺が昔働いていたところの同僚だったんだが、結婚して今はハワイに住んでるはずのヤツだよ。
離婚したなんて話もきいたことないし、けっこういい家庭を築いてたと思うんだけどな。」


「既婚者ってどういうことなんだ・・・。
とにかく、調べてみないといけない。

もし、重婚でもしようとするなら結婚詐欺だ。
すぐに小花に知らせないと、大変なことになる!」
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