お金より体力が大事?
ロサンゼルスの総合病院で小花はまだ意識がもどらない状況だった。


小花の請け負った仕事としては映像も写真もすでに全部撮り終えており、ドキュメンタリー番組もほぼ完成していた。

残るは文章を掲載するだけ・・・というところで、スタッフの身の回りの世話をしていた女性2人が小花に発砲してきたのだった。

山口が割り込んで小花を助けて山口は肩を、小花は足に銃弾を受けた。

山口の肩は銃弾がかすめていったので大したことはなかったが、小花は手術を受けなければならなかった。

幸い命はとりとめたが発熱してまだ下がらない状態だった。
地元の警察官が病院で山口のところへやってきた。


「ミスターヤマグチ、犯人たちの動機がわかったので説明しておく。
原因は君らしいね。」


「えっ?どうして・・・僕が?」


「2人は、いやとくにアンは君が好きだったみたいだ。」


「アンとキャリーはカメラ助手や雑用をしてた女性じゃないですか。
どうして、僕が?」


「君はアンたちが仕事でミスをしたときに、1度ならず2度もはげましただろう?」


「そんなの仲間だったら当たり前じゃないですか?」


「いや、アンはそうは思ってなかったようだ。
アンは今までずっと職場の仲間からも、攻撃ばかりされて暮らしてきた女なんだ。」


「えっ・・・?」


「この業界では下働き的な仕事をしている女にはきびしいのが当たり前ってとこがあるからね。
変にかばったり、親切にしているとスキャンダルになるんだよ。
だからね・・・。」


「それで・・・先生を・・・?」



「君は先生と呼ぶけれど、彼女たちからすれば、小娘にしか見えなかったんだろうな。
天才の小娘は殺すのが簡単だと思ったんだろう。」



「そんな・・・そんな・・・僕が原因を作ったなんて・・・。
どうやって彼女に謝ったらいいのか。」



「日本に帰って普通の大学生にもどれといえばいいんだ。」


「えっ?・・・あなたは、樋川さん。
あれ、到着はもうちょっと遅いときいていましたが。」


「ああ、こっちにくる知り合いがいたものだから、チケットを交換してもらったんだ。
それより具合は?」


「まだ、意識が・・・もどらなくて、僕が呼びかけても反応なしです。
このままじゃ・・・僕のせいで。
僕が業界の人間についてよく調べておかなかったから。」


「君には事務所の部長からの辞令を預かってきた。」


「なんで、こんなときに?」


「こんなときだからだけど・・・彼女と寝たことでもあるのかな?」


「い、いいえ。食事にはよくいってましたけど、そのあとは仕事で出かけるか部屋にこもっておられたので。」


「そうか。じゃ、辞令にあるとおり彼女の第一秘書からベテラン作家の秘書への転属が決まった。」


「そんな。では先生の秘書は第2以降繰り上げですか?」


「いいや、小花は当分秘書いらずだ。当分執筆できないだろうし、今の仕事については第2以降でできるだろうし、とにかく予定の半年も来るからしばらくは学業に専念してもらわねばな。」
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