聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~
焦っていたカイはこの時ひとつ光る雪を見逃していた。

それには現在のリュティアの想いがこめられていた。

―悲しくて、辛くて、痛くて、もう目覚めたくない…

―これ以上の悲しみは背負えない…やっとみつけた想いだった、やっと見つけた答えだった、大切な想いだった…もう何も考えたくない…悲しい…

―雪になろう…冷たく儚い雪そのものになろう…何も感じなくて済むように、これ以上悲しまなくて済むように…

カイは気づかない。気付かずに、光る雪を追い続ける…。
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