聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~
最近はこうして四人で街の視察に出かけたりすることが多くなった。

教会へ、市場へ、産所へ、畑へ、いろいろなところへ出かけては人々に交じって働き、言葉をかわす。

リュティアが、守るべき民ともっと身近に触れ合いたいと願ったからだ。それに加えてリュティアはほんの少しでいい、昔のような仲間たちとの明るい時間を取り戻したいと、素直な気持ちを仲間たちに伝えた。

四人でいる時は敬語を使わないでほしいとも頼んだ。

仲間たちはこの切なる願いをしっかりと受け止め、頻繁に街への視察ができるよう、またその時間を四人で過ごせる時間にするよう最大限の努力をしたのだった。

当然のことながら、その分執務は遅れている。そのことを悪く言う人もいる。でもリュティアはもう気にしていなかった。

即位してから今までは、皆の求める女王になろうと努力してきた。それは全員に認められようとすることにほかならなかった。

そんなことは不可能だとリュティアはやっと気づいたのだ。

そうしたら自然と、女王としてふさわしい振る舞いを考えるより、人間として誇れることをしたいと思うようになった。

民を大切にし、軍を大切にし、仲間を大切にする。

それを自分なりに誇りを持ってやってみようと思うようになったのだ。そうしたら、何かがとても楽になった。

―その心境の変化はすべてカイのおかげだ。

リュティアは思い、前を行く馬上のカイをそっと見つめる。
< 64 / 141 >

この作品をシェア

pagetop