泣き虫王子と哀願少女
どれくらいそうしていただろうか。
目を閉じて俯く私の頬に、不意に冷たい感触が走った。
「キャッ!」
驚いて目を見開く私。
焦点が定まらない瞳をパチパチさせ目をこらしてみる。
すると「大丈夫か?」という男性の声と共に、オレンジ味の炭酸飲料の缶が視界に飛び込んできた。
「わわっ!」
声のするほうへ慌てて振り向く。
「潤君!」
「おう」
そこには両手に缶を持った潤君が、心持ち疲れた表情でたたずんでいた。