泣き虫王子と哀願少女
「誰っ?」
「あっ……!」
しまった!
2人の視線が一斉に私へと向けられる。
「雫ちゃん?」
「深海……!」
「あ、あの……えと……」
うまい言い訳も思いつかず、ひたすら目を泳がせる私。
誰がどう見ても、盗み聞きをしていたとしか思えないだろう。
視界に映る潤君も、珍しく驚いた表情をしている。
もしかして私……お邪魔虫……?
「あのっ……ごめんなさいっ!」
そう思った途端たまらなくなった私は、謝罪の言葉と共に逃げるようにしてその場を後にしたのだった。