アキと私〜茜色の約束〜
「勝負って?」
「スリーポイントシュート三本勝負。茜はブランクがかなりあるから、少し前からでもいい」
秋人は靴の爪先で線を二本描く。
私がシュートを打つのは、フリースローとほぼ同じ距離だ。
「俺が勝ったら」
秋人はそこで言葉を止めると、私を真っ直ぐに見据えた。
「俺と結婚して」
「え…っ」
突然のプロポーズに、一瞬頭が真っ白になった。
心臓が張り裂けそうなぐらい早鐘を打っている。
秋人は、もう私のこと何とも思ってないって…そう思ってた。
でも、違うの?
私、自惚れてもいいの…?
「…私が勝ったら?」
「茜の言うこと、なんでも聞くよ」
秋人がふざけてるわけじゃないってことぐらいわかってる。
その瞳から、緊張が伝わってくる。
勝負なんてしなくても、私の気持ちは決まってるのに。
多分、秋人も私と同じ、いやそれ以上に不安なんだと思う。
二年も私の我が儘で待たせちゃったし。
待たせてる私と待ってる秋人じゃ、不安の大きさは全然違う。