アキと私〜茜色の約束〜

だけど、いつまで経っても痛みが体を襲うことはなく。

怖くてギュッと瞑っていた目を開けると、私を庇うようにして私の下敷きになってる男の子の姿があった。

木から落ちた後のことははっきりと覚えていない。
気を失い、病院に運ばれたようだ。

木を登ってまで助けてくれた男の子が誰だったか覚えていないけど。

多分、あれはアキだったと思う。

アキは右口角の少し上あたりにほくろがあって、ぼんやりと見た男の子にも右頬にほくろがあった。

若干位置が違うけど、そのぐらいの記憶の誤差は十分あり得るだろう。

あの日から、アキは私のヒーローになった。


病院で目が覚めると、目の前には目に涙を浮かべたアキがいて、『馬鹿茜!』って怒鳴られたっけ。


『茜はおっちょこちょいだから、僕が一生そばにいて茜を守るよ』


そう言って、チュッと額に口付けたアキ。


ねえ。
アキは、あの約束を覚えてるーーー?



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