天国への切符



静かにリビングのドアを閉めると、そのままお風呂に入った。


そして湯船に浸かりながら…ずっと考えた。



泣くのは、悲しいから泣くんだよね?

辛いとか、悔しいとか苦しいとか。


そう思うから泣くんだよね?




さっきお母さんは、悲しかったの?


吉岡も今日、何か辛いことがあったのかな?




ふたりの泣き顔が、

交互に頭に浮かんだ。



分からないよ……


何も分からないから…余計に苦しくて。


何の力にもなれない自分が歯がゆくて。



だってあたし、こんなだもんね…

何の頼りにもならないし文句ばっかり言うし。


そんなあたしに…おばあちゃんのことなんて、何も話すわけないよね…


こんなあたしに…吉岡も自分のことを相談してきたりするわけないもんね…。




泣き顔なんて見なきゃ良かった。


見なければ…こんな気持ちにならずに済んだかもしれないのに。

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