天国への切符
どうしよう。何て言おう。
「そっ、そろそろ…帰ろう…か」
だっせー、小さな声。
情けねー、なんて思いながらもやっとの思いで声をかけると、振り返った平野と目と目が合った。
「…うん、帰ろっか」
だけどそう言って目をそらした平野も、いつもの平野ではなくて。
だから余計に変な緊張感に包まれていった。
ガタッと椅子が音を立て、平野が立ち上がる。
カバンを手にしたことを確認すると、俺が先に歩き出してそのうしろを平野がついてきた。
それから駐輪場まで向かう間ずっと。
俺たちが隣同士になることはなくて。
少し空いてしまっていた距離に、何故だかすごく焦っている自分がいた。