天国への切符
「つーか何?このクラス、イジメとかやってんの」
その時だった。
重い空気を打ち破るように、教室の後方から大きな声が響いた。
クラス中の視線が一気にその声の主に注目する。
「今時イジメとか、ははっ、んなもん流行んねーって」
いくつもの視線に晒されているのに、言いながら笑っている。
ウソでしょ?
こいつマジかよ…
その声の主は、転校してきたばかりの吉岡だった。
「は?何勘違いしちゃってんの。イジメなんてしてねーよ!注意してあげてただけですー、前髪が伸びすぎだから」
サエは苛立った口調でそう言うと、吉岡をジロッと睨みつけた。
サエ怒らせたら面倒くさいんだから…いちいち怒らせんなっつーの!
吉岡をチラッと見ると、ふと目が合った。
力強い真っ直ぐな目。
なんか…真っ直ぐ過ぎて、その目からすぐに視線をそらした。
目だけで訴えられたような気分だった。
お前も何やってんだって。言われたような気分になった。