純愛は似合わない
結局、この間も連れて来られたショットバーに2人で並んで座る。

このバーはビルの15階にあって、ガラス張りの大きな窓から景色が一望出来た。オフィスビルの灯りや商業ビルの灯りがゆったりと視界に入り、落ち着いた雰囲気の店だ。

「ねぇ煙草吸って良い?」

「あれ?煙草吸うんだ。早紀ちゃん」

ヒロは以外そうな顔をした。

「リラックスすると吸いたくなるのよね」

「もしかして、うちの店に来た時は緊張してたの?」

「……あんた達ってすぐにかしずいて火を付けようとするじゃない。あれ、ウザいのよ」

自分のお気に入りであるスリムなライターを取り出し、メンソール煙草に火を付けた。

隣に座ったヒロを見やると、肩を揺らしてクスクス笑っている。

「早紀ちゃんって、やっぱり笑える」

「やぁね、笑い上戸」

私もつい可笑しくなって、口元が緩んだ。


「早紀ちゃんが笑ってるの初めて見たかも」

ヒロはごく自然に私の頬に手を伸ばした。

「ずっと近寄りがたそうな美人の顔を作ってるよね」

「世の中、そんなに笑えることばかり無いでしょ」

ヒロはそんな私の頬をムニッとつまんで笑う。

「今の早紀ちゃんの顔、結構笑える」

「痛いし、煙草吸えないんだけど」


この日の夜は、馬鹿みたいにじゃれ合いながらくだらない話しに盛り上がり、深夜まで飲み明かした。

これが私達の腐れ縁的緩い友情の始まりだった。
< 29 / 120 >

この作品をシェア

pagetop