純愛は似合わない
さて、と。
薬も飲んだし、シャワーも借りてさっぱりした。
鏡に映る私の顔は化粧がないせいで、若干顔色が冴えないが。って、ん?
バスタオルで被っていた、自分の身体の異変に今頃気が付いた。
胸元や、おへその横、そして良く見ると内腿にまで、べったりとマーキングされていたのだ。
それもケッコウな数。
あれは、夢、じゃない?!
夢でなければ、私は歓喜の声をあげていたことになる。
途端に身体の力が抜けそうになった。
最後までしなかったから、目覚めた時、私の身体はあんなに熱くなっていたのだろうか。
……なんか、考えたくないわ。
私は前日着ていた通勤用のワンピースに、迷うことなく袖を通した。
これは大丈夫だけど、胸元がちょっとでも開いた服は着れない。
病人にキスマーク付けるなんてあり得ないでしょ。
悪戯にしては質が悪い。
既にクリーニングにでも出されたのか、汗で一杯のパジャマは何処を探しても見付からなかったので、今着ていた分のパジャマだけ手持ちのエコバッグを取り出して突っ込んだ。
ついでに通勤用バッグの中のスマホをチェックすると、里沙からのメールとヒロからの着信が入っていた。
里沙は私の体調を気遣うメールで、今日も休日出勤しているらしい。
ヒロは夕べ、時間をずらして3件の着信。
あれ以来、ヒロの店に行ってなかったからかしら。
私自身、忙しかったこともあるけれど、少し思うところもあったのも確かで。
予定も無いのに、週に1度も顔を見ないことが何週も続くなんて、今までに無いことだった。