純愛は似合わない
激情が過ぎた後、冷静さを取り戻した速人は私の腰を引き寄せ「お前を脅すような真似はしたくない」とだけ呟いて眠りに落ちた。

時差ボケと疲労を抱えた速人は、その腕の中から抜け出ても目を覚ますことは無かった。


……もう何も望まない。



その後、速人の連絡は全て無視した。
とは言っても、速人自身が忙しかったので数えられるほどの話しだが。


美好さんは何かを察して、知らない振りをしてくれた。この間の速人の言葉から、決して無関心だった訳でもなく、寧ろ影で橋渡し役をしようとしたみたいだ。

速人が帰ってくるまでの長い時間、変わらない、公平な心遣いが優しくて嬉しかった。

でも速人が帰って来た今となっては、美好さんとも距離をおくべきなのかもしれない。

多分、私では彼女の期待には応えられなから。


友野ソリューションで働いて、他人と上手く調和するスキルも身に付けて。

楽しい友人も出来て、それなりの時間を過ごして来た。

でも、たったひと月、速人が身近にいるだけで、こんなにも簡単にグラグラとしてしまう、自分が恨めしい。

もっと強く、強かに生きたいのに。

















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