豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~


孝志はポケットに手を入れて、輝を眺めた。
唇を噛み締め、猛スピードで何かを考えている顔だ。


よしっ
とどめだ!!!


「俺は昔も、今も、ミツのことしか見てない。
お前には、やらないよ」


軽く微笑んで見せた。
これが、大人の余裕ってやつ。


すると、にやりと輝が笑うのが見えた。


あれ? なんだろ、不安になる、あの顔。


「佐田さん、自信がないみたいだ」
輝が言った。孝志を軽く笑うように。


「一生懸命、優位に立ってることを強調してる。
でも本当は気づいてるんでしょう? ミツさんの心が、自分から離れてしまっているってこと」


孝志は何も言い返せない。


「あなたがいない間、俺はずっとミツさんの側にいて、ミツさんと世界を共有してた。今は俺の方が、彼女に近い」


輝が挑むように、一歩、孝志に近寄った。


「ミツさんに聞いてみればいい。どちらが、自分の世界に近いのか」

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