豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
夜、孝志がアパートにやってきた。
あんな高級マンションを見た後では、この部屋がとても小さく感じる。
「何か食べる?」
「お腹へってない」
孝志は帽子を取ると、髪に手をいれてかきあげる。光恵のベッドを背もたれにして、ラグの上に座り込んだ。光恵は冷蔵庫から麦茶を取り出し、グラスについだ。
「今日、芝居、見て行かなかったんだね。すぐ帰った?」
「うん、そう。ちょっと用事があって」
光恵は孝志の目をみることができない。はい、とグラスを孝志に渡すと、少し孝志と距離をとって、同じくラグの上に腰を下ろした。
「大丈夫だから」
孝志は安心させるように微笑む。
「三池さんに聞いたんだろ? 俺の調子がまだ出ないって」
「……うん」
「絶対に大丈夫。今まで俺が本番で駄目だったこと、ないだろう?」
「そうだよね」
孝志はグラスを置いて、光恵の手を握った。
「舞台が終わったら、どこかに行こうよ。恋人らしいことがしたい」
「……うん」
舞台が終わったあと、わたしはまだ孝志の側にいられてるだろうか。