豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~


ホテルの一室。窓際のソファに二人で並んで座った。
孝志は、今すぐこの広い窓からジャンプして、全部を終わらせてしまいたい気持ちで一杯だ。


記者は、扉のところで志賀と話をしている。


ゆうみは孝志にそっと話しかけた。


「ねえ、孝志」
「なに?」
「どうして光恵さんがいなくなったか分かる?」
「さあ……わかんない。もうどうでもいいよ……」
孝志は思わずそんな弱音を吐いた。


「ミツは俺が変わったっていう。でもミツの望む通り、大人の男になれるよう努力しただけなんだ。中身はどうしようもない男のまま」
「確かに、孝志は変わった」
「そうかな」
「彼女のために、ライフスタイルを変えたんでしょう? そんなこと、どうしようもない男はできないよ」
「……」
「自分で『変わった』って気づかなくちゃ。彼女の心が欲しいのなら、劣等感をごまかすような見せかけではなく、変わった自分を見せて、今の自分を好きになってもらうの」
「でも俺、彼女の前だとおどおどして……なんていうか、恋愛も上手にできないし」


そこでゆうみはくすっと笑った。


「それでいいじゃない。ごまかす必要はないんだって。あの夜、わたしが迫っても、あなたはトイレに逃げ込んで、朝まで出てこなかった」
「すげー、かっこわるいじゃないか。ゆうみに気まずい思いもさせて……ガキみたいだ」
「いいの、すごくかっこいいよ。彼女のために、そんなことできるなんて。たいていの男は目の前の女性に手を出しちゃう。だから、わたしは孝志が大好き」


孝志はゆうみのきれいな横顔を眺めた。彼女は恨み言を言わない。孝志の気持ちを、選択を、受け入れて、それでもなおまっすぐに『好き』と表現する。


魅力的な女性。




「もう一度、台本を読んでみて。光恵さんが孝志をモデルに書いたんでしょう? 前も言ったけど、あの台本は、今のあなたそのまま」
ゆうみが孝志の手を握る。


「あの台本には、光恵さんの描く、愛しいあなたの姿が見える。もう一度、難しいことは考えずに、うまく演技しようとか、そんなこと考えずに、ただ素直に読んでみて」

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