豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「お待たせしました」
向いのソファに、記者が腰掛けた。三十代半ばの女性。眼鏡をかけ、きりっとした雰囲気だ。
カメラマンがビデオカメラを回し始める。取材がスタートした。
けれど、記者の言葉は、孝志の中を素通りしていく。機械的に模範解答をしゃべった。
その間も頭の中はぐるぐると、ゆうみが言った言葉と、もう暗記してしまうほど読み込んだ台本が、回り続けている。
舞台の主人公は、腕はいいけど、人の心に疎いシェフ。不器用で、コミュニケーション方法がずれている。かっこうわるく、モテなくて、もちろん女性経験もない。
これは、今の俺、そのままだ。
きらびやかな世界を必死に生きる今も、狭いワンルームでピザをお腹いっぱい食べてた昔も、変わらない。
俺が必死に隠そうとしていた姿。
そんなシェフは、とても気になる存在。
黙っていると、何かあったのかと、レストランのスタッフみんなが総掛かりで心配してしまうような。
ゆうみ扮するウェイトレスが言う『なんだか、かまいたくなっちゃうのよね』
そんな彼が、初めて恋をする。
不器用に、でも必死に。
次第に彼は彼女だけじゃなく、自分を囲む人々の心の動きも、感じられるようになる。
舞台が終わる頃の彼は、かっこうわるく、モテなくて、女性経験もないけれど、最初の彼とは別人。
人のために何かしたいと、真剣に思うようになった。
その変化が、彼を輝かせる。
そうか。
ミツは、こんな風に俺をみてたんだ。