豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
千秋楽から一週間後の、週末。
光恵は、三池から稽古場近くの居酒屋に呼び出された。
駅前のチェーン店。会社帰りのサラリーマンが、ビールを飲んで騒いでいる。光恵は、大型クーラーの前の席にいた三池に、お辞儀をした。
「おつかれ、悪いね呼び出して」
「いえ、大丈夫です」
光恵は座ると、店員に「中生ひとつお願いします」と声をかけた。そしてすでにジョッキの半分を開けている三池に「なんでしょうか」と訊ねた。
「聞いてるかもしれないけど」
三池はそう言って、ビールをぐいと飲む。
「孝志がしばらく抜けるんだ」
光恵は目を丸くする。
「……本当ですか?」
「ああ、ミツには言ってなかったんだな……あいつドラマのオーディション合格したんだ。秋から撮影が入るし、しばらくそっちに本腰を入れたいからって」
「そう……ですか」
孝志が抜ける……そうなんだ……。
「退団するわけじゃない。また戻るって言ってるし。でもそれがいつかはわからない」