豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~


なんだか素顔の自分を見られたようで、無性に落ち着かなくなった。眼鏡を手で軽く直す。その様子を孝志は楽しそうに眺めていた。


「じゃあ……」
光恵は首で玄関を示す。夜も遅いこの時間、早くこのおデブを追い出したかった。


「いやいや、帰らないから」
孝志は再びテレビの前に胡座をかくと、当然という顔で光恵を見上げた。


「は? もう遅いし帰ってよ」
「家に帰ると、マネージャーに捕まっちゃうだろう? とんでもない」
「じゃあ、どうするつもり?」
「ここにいよっかなって」


孝志は能天気にもそう言った。


「……いつまで?」
光恵はおそるおそる訊ねる。


「だから、一ヶ月後のプレミアまで」


光恵は思わず孝志の背中を蹴りつけた。


「いて!」
「そんなん、駄目に決まってるでしょ?!」
「なんでさ〜」
「だって……デブだとしても、一応男でしょ?」


孝志は「今気づいた」とでも言うように、目を丸くした。


「そ、そっか……ミツ、女だ」

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