豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「ミツの言う通りにするから、お願いします」
孝志は正座をして頭を下げた。
「……わたしも、仕事あるし……」
光恵はそう言ってから、なんとなくむなしくなる。仕事と言っても、食べて行けない仕事だ。
孝志は顔を上げると、「じゃあ、ミツのお願いも聞くからさ」と言う。
「なんでもいいよ!」
焼きたてあんぱんについている、子どものような目。
きっと、何にも考えてないんだろうな……。
「わたしたちの舞台に帰って来て……一度でいいから……いつか」
光恵は無意識にそう言っていた。
孝志の顔がぱあっと明るくなる。
「なんだ、そんなこと? もちろんだよ!」
孝志は巨体を動かして、光恵に歩み寄り手を握った。
「ありがとう。本当にありがとう!!! 助かった!」
それから光恵の顔をまじまじと見て「ミツ、家だと眼鏡なんだね」と言う。孝志の身体からは、ほんのりと甘い香りが漂っていた。
「できる女っぽい。かっこいいよ」
そういって、にっこりと笑った。