アメット

 学が無いと言っているが、それ相応の教育をしていないのだから仕方がない。

 きちんと彼等に教育を施せば、化けるかもしれない――

 と、言葉に出しそうになるが、流石にイデリアの前で最下層の者に肩を持つわけにはいかない。

 だが、脳裏に過ぎったのはクローリアの姿。

「勝手に選んで宜しいのですか?」

「通常、紹介だ」

「と、申されても……」

「B階級の者が家政婦を持つのは、異例だからな。C階級に、知り合いなどいない。勝手に捜せ」

 B階級の者の手助けをしたくないのが本音らしく、イデリアの言い方は素っ気ない。

 シオンは家政婦を雇うに当たって、将来性が感じられるクローリアがいいと決めていた。

 ただ、予想以上に彼女を雇うのは難しく、第一に考えないといけないのは最下層へ行く方法だろう。

 ここは素直にイデリアに頭を下げ、許可を取らないといけない。

 あれこれと詮索される可能性が高いが、下手に嘘をついたりアムルに再び裏工作をしてもらうわけにはいかない。

 これによりイデリアに貸を作ってしまうが、B階級の人間として生活しているので仕方がない。

「個人的には、最下層の……」

「やはり、肩入れか?」

「いえ、それは違います」

 やはり「最下層」の名前を出した瞬間、先程と同じように肩入れと言われてしまう。

 こうなったら嘘をつかず正直に言った方が怪しまれず、それに嘘を繰り返していると矛盾が生じてしまう。

 クローリアの名前を出すことはしなかったが「ある少女」として、話していく。

「ほう、それで?」

「ですので、雇ってあげようか……と」

「慈悲か?」

「そのように捉えられなくもないですが……何と申しますか、頭が良さそうな感じがしまして……それに、C階級の人間に知り合いはいません。となりますと、その下になりまして……」

「なるほど」

「ですから……」

 シオンの話に納得する部分があったのか、イデリアは何度か頷いて見せる。

 すると最下層の者が家政婦に雇われるのが面白いのか、肩を震わせ笑い出す。

 そして「下の者は下の者とつるむのが相応しい」と明らかに差別的な言い方をすると、これについて了承してくれた。

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