アメット
「それでいい?」
「お願います」
「この店で欲しいのは、これだけでいいかな? 他に欲しい物があるのなら、持って来ていいよ」
「いえ、これ以外は……」
「ないのなら、それでいいよ。それにこの店だけで決めなくていいし、雑貨店は他にもある」
「では、其方に……」
「うん。それがいいね」
巨大ショッピングモールに出店している店の数は多岐に渡るが、ひとつの店で欲しい物が全て揃うわけではない。
それにショッピングモールでの買い物経験がないクローリアに、楽しい時間を味わって欲しい。
また、早くこの階級の雰囲気に慣れてもらわないといけない。
確かに、シオンの言い分もわからなくもない。
先程のエスカレーターの件といい、クローリアは知らないことが多すぎる。
いつまでも最下層での生活を引き摺るわけにもいかず、それにこの階級のルールを学ばないといけない。
だからこそ、シオンはあらゆる体験をさせる。
そのように伝えると、シオンはクローリアから食器とマグカップを受け取り会計へ向かう。
最初はその場で会計が終えるのを待つつもりでいたが、急に寂しさが込み上げてきたのだろう、クローリアは小走りでシオンの側へ行くと邪魔にならないようにと後方で静かに待つ。
彼女の一連の動作を眺めていたシオンは、会計中は特に反応を示すことはしなかったが、会計を終えると同時に「寂しいのなら、会計中に隣にいて構わない」と、クローリアを驚かせる言葉を掛ける。
見透かされたかのような言い方に驚いてしまうが、今の言葉は嬉しかった。
「会計、終わり」
「有難うございます」
「これは、持っているよ」
「いえ、大丈夫です」
「そう言うけど、多くの荷物を持っていると品物を見るのに邪魔になってしまう。だから、俺が持つ」
「で、では……」
シオンに荷物を持たせるのは申し訳ないことだが、彼が言うように荷物を持っていては品物を見ることができない。
クローリアはシオンに荷物を頼むと、軽く頭を垂れる。
礼儀正しい彼女の態度にシオンは口許を緩めると、雑貨店や洋品店に向かい必要な物を揃えていく。