アメット

「そう言うのなら」

「……すまない」

「何か込み入った話か」

「それに近い」

 言動から察するところ、相当重要な事柄なのだろうとアイザックは悟る。

 しかしシオンの言葉があるので、今この場所で聞き出すわけにはいかない。

 何処で誰が聞き耳を立てているかわからず、下手に噂として研究所全体に広がってしまえば厄介になってしまうだろう。

 アイザックは一言「わかった」と返すと、仕事を早めに終わらせ夜予定を開けておくと約束する。

 彼の言葉にシオンは再び感謝すると、これについて話した時どのような反応を見せるのか危惧する。

 そう、シオンがアイザックに話そうとしているのは、自分が統治者一族の一員というもの。

 アイザックは、階級が上の者にいい印象を抱いていない。

 現在いい関係を築いているのは同じB階級で、話が合うから――という二点が深く関係しているのではないかとシオンは考える。

 だからB階級の人間ではなく、統治者一族と知ったらどうなってしまうのか――

 しかし、いつまでも隠し通せないので、今日アイザックに正体を話す。

 シオンが唯一願うのは、アイザックが肯定的な反応を見せてくれるということ。

 恐怖心に似た感情が湧き出してくるが、シオンは平然と振る舞う。

 そして互いの仕事場へ赴き、夜が訪れるのを待つ。


< 164 / 298 >

この作品をシェア

pagetop