アメット

「なるほど」

「迷惑だった?」

「いや、そんなことはないよ。それどころか、話してくれて嬉しい。知らないより、知っていた方がいいし」

「有難う」

「礼はいいよ」

「受け止めてくれたから」

「受け止めたって……最初は驚いて、混乱したぞ。いきなり、統治者一族って言うのだから」

 それについてシオンは苦笑しすまないという表情を浮かべるが、回りくどい言い方をするよりストレートに言った方がわかり易いのではないかと判断し、この方法を取ったと話す。

 しかしそのやり方が話の信憑性を強めたらしく、アイザックがシオンの話を信じるに至った。

「この前、有休を取ったのは?」

「統治者の集まりに行った」

「本音では、行きたくなかった」

「どうしてわかる」

「今の話で、嫌がっていると思った」

「流石、アイ」

「長い付き合いだから」

 アイザックは上の階級の者にいい印象を抱いていなかったが、シオンのような人物が上の階級にいるのなら一部の人間を信じてもいいのではないかと思いはじめる。

 また現在、ドームを統治しているのはシオンの父親で、浄化プロジェクトに積極的で好意的に動いている。

 友人の父親の為に――

 それもいいのではないかと、アイザックの表情が緩む。

「どうした?」

「将来、跡を継ぐのか?」

「そうなるかな。子供は、俺一人だし」

「じゃあ、統治者様か」

「アイに敬称付けされたくないな」

「敬語は?」

 勿論、其方も使って欲しくない。

 正体を知られてもアイザックとの関係は崩したくないので、昔と変わらず付き合って欲しいとシオンは頼む。

 それにアイザックとはいい友人同士でいたく、上司に対しての不平不満を言えないとストレスが溜まって体調を崩すと続ける。


< 167 / 298 >

この作品をシェア

pagetop